Webマーケティングにおいてリスティング広告は、外せない選択肢の一つです。どんなメリットがあるのか、どんな仕組みなのかなどこの手法ならではの特長を踏まえた上で、導入するかどうかを検討してみましょう。本記事ではリスティング広告について、基本的な内容から成果を出すためのチェックポイントまで詳しく解説していきます。ぜひ最後までチェックして参考にしてみてください。
※本記事の情報は2022年3月時点のものです。最新情報は公式サイトをご確認ください。
リスティング広告とは?
リスティング広告とは、Googleなどの検索エンジンの検索結果画面に表示される広告のことです。「検索」というユーザー自らのアクションがあって初めて表示される広告のため、ある程度自身の購買意欲などを認知している顕在層向けの広告と言えます。
「検索連動広告」とも呼ばれており、その名の通りユーザーが検索した語句が、広告主があらかじめ入札をかけていたキーワードと一致した場合に広告が表示される仕組みです。Googleでは「検索広告」または「検索キャンペーン」、Yahoo!では「検索広告」と呼ばれています。
ユーザーがキーワードを検索するのは、そのキーワードに対して興味関心を持ち、答えを求めている時です。そのためリスティング広告は、ユーザーの検索意図とマッチする広告文を表示できるとクリックされやすく、また遷移先のWebサイトでユーザーの求める答えを提示できていると成果につながりやすいという特長があります。
検索されたキーワードに応じて広告を表示させられるのに加えて、リスティング広告では狙ったユーザーに広告を届けるために、「ターゲティング」で配信先を絞れる仕組みになっています。ユーザーの地域や表示させる時間などをあらかじめ設定しておくことで、ターゲティングの精度を上げ、クリック率(CTR)やコンバージョン率(CVR)の向上を図ることができるのです。
リスティング広告が掲載される場所
リスティング広告は、検索結果画面の上部や下部に表示されます。特に1ページ目の上部は、検索結果を確認する際に最初に目に入る場所のため、ユーザーの目に止まりやすいです。基本的には、広告を除いた検索結果である「自然検索」よりも優先して表示されます。
自然検索やSEOとの違い
自然検索では、検索エンジンが独自のアルゴリズムに基づいてさまざまな項目からそのWebサイトを評価し、検索結果画面に表示する順位を決定します。1位2位3位と1ページ目上部から順に表示し、2ページ目以降へと続いていく仕組みです。なお自然検索かリスティング広告かは「広告」というラベルによって見分けられます。
また「SEO」とはSearch Engine Optimizationの略で、日本語では「検索エンジン最適化」と呼びます。Webマーケティングでよく耳にする「SEO対策」とは、対象のWebサイトを自然検索の上位に表示させるために行う、さまざまな施策の総称のこと。Webサイトを自然検索によって上位に表示させると、ユーザーの目に止まる機会を増やせるため、流入が増えることが期待できます。SEO対策は広告配信のような費用が掛からないため、うまくいけば費用対効果の高い施策と言えるでしょう。
ただし自然検索で上位表示させるには、検索エンジンに高く評価されるWebサイトを作らなければなりません。そのため、ある程度の時間と労力が必要な上、決して「SEO対策をしたから確実に上位表示される」というわけではありません。またせっかく上位表示ができても、そのまま順位がキープされ続ける訳ではなく、常に競合の動向や、検索エンジン自体のアルゴリズムアップデートなどに合わせた対応をし続けなければなりません。
一方、リスティング広告は、開始後すぐに検索結果ページの上部に表示できる可能性があるマーケティング施策です。広告の品質や入札価格などから決まる「広告ランク」が高いものが上位に表示されるため、テキストと遷移先のWebサイトとの関連性を高めたり、入札価格を調整したりして広告ランクを改善することで、比較的簡単に上位表示を狙えるでしょう。
リスティング広告の強み
リスティング広告には、
- 費用を管理しやすい
- 広告の開始・停止がすぐにできる
- PDCAを回しやすい
- SNS広告やディスプレイ広告と比べ、準備に時間がかからない
という4つの強みがあります。一つずつ見ていきましょう。
費用を管理しやすい
後程詳しく説明しますが、リスティング広告は基本的にユーザーのクリックに応じて料金がかかる仕組みのため、1日の平均予算を設定することで、広告の予算をある程度コントロールできます。
またリスティング広告は少ない予算からでも始められます。配信の時間や地域などを設定することもできるため、狙ったタイミングで、狙ったユーザーへ向けて効率的に予算の振り分けが可能です。
広告の開始・停止がすぐにできる
リスティング広告は、広告審査に通過さえすれば即日で出稿できます。審査にはGoogleの場合通常 1 営業日以内、Yahoo!の場合は約3営業日かかります。
また出稿中の広告をすぐに停止できる点も、リスティング広告の強みの一つです。最低掲載期間や出稿開始日が決まっていないため、効果が見られる期間だけ掲載を続け、随時チェックして反響が得られなくなってきたら広告を停止するなどの運用ができます。
PDCAを回しやすい
広告のクリック数や成果の分かるコンバージョン(CV)数、クリック数に対するコンバージョン数の割合であるコンバージョン率(CVR)といった広告の反響を可視化し、PDCAサイクルを回して改善を重ねていきやすい点も、リスティング広告の大きな強みです。これらの指標はGoogleならばGoogle広告の管理画面上、Yahoo!ならばYahoo!広告の広告管理ツール上で確認できます。
まずは売上目標などから逆算して、各指標の目標数を設定しましょう。実際に広告を配信した結果、どのくらい目標に近づけていたかを評価し、もしうまくいっていない場合には「何が問題なのか」「どうすれば目標に近づけるのか」を検討、改善した上で再び広告を出稿しましょう。
PDCAは回し続けることが大切です。うまくいっている場合も常に状況を監視し、課題を探してより良くしていくような運用を行ってください。
SNS広告やディスプレイ広告と比べ、準備に手間がかからない
リスティング広告はテキスト形式で表示される広告です。テキストと予算さえあれば出稿でき、画像などの広告用素材を用意する必要もないため、事前準備にもあまり手間がかからないタイプの広告と言えるでしょう。Googleのリスティング広告は基本的に見出し、説明文、表示URL、広告表示オプションの4つの要素から構成されます。広告表示オプションは、電話番号、住所、商品やサービスの特長といった情報を追加で表示できるオプション項目です。最低限3つの見出しと2つの説明文、遷移先のURLがあれば、出稿することができます。
リスティング広告の費用について
次にどのような形で広告の料金が発生し、どの程度の費用がかかるのかを見ていきましょう。しっかりとコスト管理を行うためにも、事前に予算の考え方を確認しておく必要があります。
クリック課金制
リスティング広告の基本はクリック課金制です。「Cost Per Click(CPC)」と呼ばれる場合もあります。ユーザーが広告をクリックした段階で料金が発生する仕組みとなっており、クリック単価にクリック数をかけた料金が広告費用となります。単に検索結果の画面に広告が表示されただけでは料金は発生しません。
クリック単価は設定するキーワードによって変わります。選んだキーワードの競合が多いほど、クリック単価は高騰する傾向にあります。それぞれのキーワードのクリック単価の概算は、Google広告なら「Googleキーワードプランナー」、Yahoo!広告では「キーワードアドバイスツール」を使って調べることが可能です。
※出典:Google広告ヘルプ「平均クリック単価(平均 CPC): 定義」
※出典:yahoo!広告「キーワードアドバイスツールの抽出結果の見方」
掲載順はオークション形式で決まる
リスティング広告ではオークションによって、掲載の順番が決まります。入札価格や広告の品質などから算出される広告ランクを競い、同じキーワードに入札している広告の中でもっとも広告ランクの高いものが1位の広告枠を落札します。2位、3位と続く形で順位が決まり、それらが検索結果ページに掲載されるという流れです。オークションはユーザーが検索を行う度に実行されるので、入札結果は常に変化します。
また必ずしも入札価格が高ければ落札できるという訳ではなく、あくまでも広告ランクで競うため、広告の品質が高く評価されれば、低い入札価格で競合を上回る掲載順位を落札できる可能性もあります。
リスティング広告にかかる費用の相場は?
選択するキーワードやクリック単価によって大きな幅はありますが、リスティング広告を配信する
1アカウントあたりにかかる費用の相場は、1カ月あたり20万~50万円程度です。
広告代理店に依頼する場合は広告費用に加えて手数料などが掛かります。ある程度の結果を出すために最低出稿金額を設定している代理店もあるため、依頼する際は事前に費用感をしっかりと確認しておきましょう。
マーケティング戦略によっては、費用を上げた方がより大きな結果が期待できる場合もあります。そのためこれらの相場は、あくまでも参考程度と考えてください。
成果を出すためのチェックポイント
リスティング広告で成果を出すためには、複雑な設定を適切に行う必要があります。とりわけキーワード選定は非常に難しく、ユーザーの検索意図を考えたり、競合の傾向に合わせて調整したりしなければなりません。その他知っておくべき知識は多岐にわたり、ある程度のコツや経験が不可欠です。
一方で、しっかりと情報を集め、適切な設定をすることで成果を向上させられるポイントもあります。ここでは初心者でも工夫できる、チェックしておくべきポイントを5つご紹介します。
そもそもリスティング広告に向いているのか?
根本的な話になってしまいますが、広告掲載したい商品やサービスがリスティング広告に向いているのかどうかから考える必要があります。
リスティング広告はテキストのみで構成されるため、ビジュアル面での魅力が大きい製品や、言葉で魅力を説明するのが難しいサービスなどを広めるには向いていないケースがあります。例えばブランドやカテゴリが認知されていない新商品や新しいサービスの取り扱いを開始する場合などは、リスティング広告よりも、ディスプレイ広告や動画広告の方が適しています。
また欲しい商品や受けたいサービスを探している段階のユーザーにアプローチしたい場合、ブランド力がなければ選んでもらえる可能性が低いため、リスティング広告では効果を得づらいケースがあります。商品の販売ならばECモールに出店するなど、ユーザーへのアピール方法を変えた方が無難と言えるでしょう。
ターゲットは正確か?
入札するキーワードは、ターゲットとなるユーザーを考慮して決定しましょう。既存顧客の傾向や自社の強みをきちんと分析してから、狙った層のユーザーが検索しそうな語句をピックアップしてください。
ターゲットを的確に設定するためには、「ペルソナ」を設定しておくのがおすすめです。
ペルソナとは、商品やサービスを利用する、典型的な仮想ユーザーのことです。
- 性別
- 年齢層
- 仕事
- 趣味
- 居住地域
- 家族構成
- 健康状態
などと細かく設定し、キーワードの選定やターゲティングの設定に生かしましょう。
また精度を上げるためにターゲティングの項目を設定する際は、正確な内容を選ばなければなりません。商品に対して明らかに無関心なユーザーを選んでしまうとよくないのはもちろん、なんとなくで選んでしまわないようにしましょう。リスティング広告は基本的にクリック課金方式のため、クリックはするもののCVに結びつく可能性の低いユーザーが多ければ多いほど、コストはかかるのに成果に結びつかないといった状況に陥ってしまう可能性があります。
多くの人に検索されるキーワードを設定しているか?
いかにしっかりとターゲティングを行い、適切なキーワードに入札していたとしても、それがあまり検索されない語句だと少々問題があります。検索数が少ないキーワードは、検索ユーザーが求めている情報とあまり関連性がないと判断され、広告が掲載されないことがあります。キーワードを選定する際は、ターゲティングとのバランスを取りながら、できるだけ検索される機会が多いキーワードを採用する必要があります。
検索ボリュームの多いキーワードを探す際はGoogleの「キーワードプランナー」などのツールを使う他、競合のWebサイトが重視していると考えられるポイントやECサイトのレビューをチェックするなど、さまざまな角度から情報を集めましょう。
質の高い広告を作れているか?
オークションで競う広告ランクは、入札価格や広告の品質などが評価されます。そのため上限クリック単価が安くても、広告の品質が高く評価されれば、より上位の広告枠に表示される可能性があります。リスティング広告の広告文を作る際は、広告の質を評価する指標も見ておきましょう。Googleでは「品質スコア」、Yahoo!では「広告の品質」という評価指標が設けられています。
Googleの品質スコアは
その内訳には
- 推定クリック率
- 広告の関連性
- ランディングページの利便性
の3つの要素を総合して、10段階で評価されます。各要素についても評価に応じて相対的に「平均より上」「平均的」「平均より下」というステータスが下されます。
Yahoo!が挙げる広告の品質には
- 推定されるCTR
- キーワードと広告の関連性
- リンク先Webサイトの過去のCTR
- アカウントの、地域での掲載実績
- インターネットユーザーの検索語句
- 各種デバイス(PC、スマートフォン、タブレット)での広告の掲載実績
などがあります。こちらについては個別の具体数値が公開されていません。ただし広告主は広告の品質の代わりとして、広告に対する「品質インデックス」という評価数値を、広告管理ツール上で確認できます。品質インデックスは10段階で評価されます。
広告を作成する際は、これらの指標を考慮するようにしてください。また出稿後もどのように評価されているかを随時確認し、次回以降の広告作成に役立てるのがおすすめです。
品質の高い広告は、検索エンジンからの評価が高くなるだけでなくユーザーにとって有益な情報になるため、CVRの向上も期待できるでしょう。
※出典:Google広告ヘルプ「品質スコアについて」
※出典:yahoo!広告「広告の品質について」
関係者に広告を出したことを共有できているか?
リスティング広告では、広告がクリックされるごとに料金が発生します。自社の社員などが誤ってクリックしてしまうと無駄な料金が発生してしまうため、注意が必要です。
リスティング広告を出稿したら検索結果画面で広告をクリックしないよう、社内はもちろんのこと、社員の家族や知り合いなどにも周知しておくとよいでしょう。
Googleの検索広告はGoogleビジネスプロフィールとの連携も可能!
Googleの検索広告のオプションとして、Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)と連携させることも可能です。
Googleビジネスプロフィールとは、Google検索やGoogle Map上にある店舗の情報を、ビジネスオーナーが管理するための無料ツールです。店舗の正確な情報を提供することで、集客に役立てます。ユーザーが店舗名を検索したり、Mapの指定範囲内で該当するジャンルの店舗を探したりすると、検索結果としてビジネスオーナーが登録した情報が表示される仕組みです。
Googleビジネスプロフィールを作っておけば、Googleの検索広告を配信する際に住所表示オプションを設定することで、店舗の場所が記された地図や住所、電話番号などを合わせて表示できるようになります。さらに、来店コンバージョンを計測できるようになる、店舗が所在している地域のユーザーに限定した広告表示が可能になるといったメリットもあります。そのため実店舗がある場合は、リスティング広告の配信と合わせて、Googleビジネスプロフィールも運用することをおすすめします。
※出典:Google広告ヘルプ「ビジネス プロフィール」https://support.google.com/googl-ads/answer/2382892?hl=ja(2022-03-23)
まとめ
リスティング広告はWebマーケティングの手段として非常に魅力的な選択肢です。ただし広告の性質や多くの機能を有効活用するためには、正しい知識とテクニックを駆使して運用する必要があります。うまく使いこなすことができれば、費用対効果の高いマーケティング施策となるでしょう。これからリスティング広告に挑戦するという方は、今回ご紹介したチェックポイントをしっかりと押さえ、効果的な運用を目指して取り組んでみてください。